【知財】似てる?似てない?「応用美術」って何?

By suzutaka, 2017年8月18日

MoMA デザインストアに行くと,オシャレな雑貨が沢山並んでいて,見ているだけで楽しいですよね。

斬新なデザインの時計や加湿器,ランプシェードなど,一見何の用途に使うのか分からない物まであったりして,置いておくだけで「アート」になったりしますよね。

 

今回は,そんなオシャレ雑貨を手掛ける経営者からの相談です。

 

【相談の概要】

弊社は,スマートフォンの充電器の製造販売を行っています。

弊社の充電器は,見た目はクマのぬいぐるみで,そのアームでスマホを抱きかかえるように持たせると充電できるような構造になっています。

パっと見ただけでは充電器とは分からない,デザイン性の高いものとなっていることが20代OLにウケて,生産が追い付かないぐらいのヒット商品になりました。

ところが,最近,オシャレな雑貨を扱うお店に偶々立ち寄ったところ,弊社のクマのぬいぐるみ型充電器によく似た商品が店頭で売られていたんです。

しかも弊社の販売価格の半分以下でした。

その影響からか,弊社商品の売上も低下していますし,インスタグラム等のSNSで「こっちの方が安いし可愛い」という投稿も見つけました。

これは著作権侵害にならないのでしょうか??

 

【アドバイス】

著作権法上,「著作物」とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と定義されています(著作権法2条1項1号)。

「思想又は感情」というと,何か高尚で哲学的なものを求められているようなイメージを受けるかもしれませんが,人の精神活動であれば足りると考えられているので,何らかの表現であれば,基本的には「思想又は感情」の存在が否定されることはないといって良いでしょう。

 

また,創作性についても,芸術的な価値が高いことを求められているような印象を受けるかもしれませんが,そうではなく,表現者の個性が表れていれば良いとされていて,独創的だったり他にないものであることまでは求められません。

 

今回問題になっているのは,クマのぬいぐるみ型の充電器ですから,表現者の個性が表れている…といえなくもなさそうです。

しかし,クマのぬいぐるみ型充電器は,量産される実用品ですから,いわゆる「応用美術」に該当し,直ちに著作物といえるかどうかは検討が必要です。

 

「応用美術」とは,簡単にいうと,「美術」を実用品に「応用」したものです。

グッドデザイン賞を受賞しているような実用品…というとイメージが湧きやすいでしょうか?

 

応用美術の著作物性について争われた裁判例は色々あるのですが,

 

「実用目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができるか」(ファストファッションショー事件 知財高裁H26.8.28)

 

という観点から判断されることが多いです。

 

なお,応用美術の著作物性が肯定された事例として,TRIPP TRAPP事件(知財高裁H27.4.14)がありますが,この裁判例では,「著作権法が文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作者等の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与することを目的としていることに鑑みると,表現物につき実用に供されることまたは産業上の利用を目的とすることをもって直ちに著作物性を否定することは相当ではない。同法2条2項は「美術の著作物」の例示規定に過ぎず,例示に係る「美術工芸品」に該当しない応用美術であっても,同条1項1号所定の著作物性の要件を満たすものについては,「美術の著作物」として,同法上保護される」と判示しており,前記ファストファッションショー事件とは異なる基準を用いています。

 

本件では,「クマのぬいぐるみ」部分が美的鑑賞の対象となるような美的特性を備えているか?という点を検討することになるわけですが,「20代OLに人気」ということは,剥製のようなリアルなクマではなく,可愛らしいクマのぬいぐるみ…ということだとしても,「美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている」とまではいえないように思われます。

 

 

もっとも,著作物性が否定されたからといって,実用品だったらなんでも真似してもOKというわけではありません。

形態模倣については,不正競争行為(不正競争防止法2条1項3号)に該当する場合には,差止請求や損害賠償請求することができます。

 

また,実用品のデザインを保護する法律としては,意匠法があります。

意匠登録が認められれば,意匠権に基づく法的な請求も可能です。

 

各法律によって保護の対象になるか否かは,専門的な知識が必要になりますから,まずは弁護士にご相談ください。