【労働】顧客情報はどう守る?

By suzutaka, 2016年6月1日

企業において,「ノウハウ」や「顧客情報」は貴重な財産です。

事業の規模に関わらず,入社時・退社時の誓約書には機密保持義務や競業避止義務条項を入れている企業は多いのではないでしょうか。

また,会社の代表者から「退職した従業員が顧客情報を競合に売ったせいで損害が出たから損害賠償請求したい!」という相談を頂くこともあります。

 

今回は,退職した従業員が持ち出した情報に関するご相談です。

 

【相談の概要】

以前、当社に勤務していた従業員が、顧客データを無断で持ち出した上、転職先の企業で使用していることがわかりました。
元従業員の行為について何か主張できることはないのでしょうか。今後の対策も含めて教えてください。

 

【アドバイス】
まず,会社が管理している顧客データを持ち出した行為について,刑法上の問題が考えられますが,窃盗罪(刑法235条)は「他人の物を窃取した」場合に成立するところ、顧客データは「有体物」ではありませんので、顧客データを会社所有のコピー用紙に印刷した上で持ち出したり,会社所有のUSBにコピーする等しない限り,原則として窃盗罪は成立しません。
そのため,私物のUSBにデータをコピーしたり私物のパソコンにデータを送ったりする場合には窃盗罪は成立しません。
また,上記行為について不正競争防止法上,差止請求(不競法3条)や損害賠償請求(不競法4条、民法709条),刑事罰(21条)も検討しうるところですが,そもそも「営業秘密」に該当するかという点に大きなハードルがあります。
不正競争防止法では、「営業秘密」(不競法2条6項)とは,「秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないもの」と定義されています。
特に,「秘密として管理されている」(秘密管理性)といえるためには単に「部外秘」とされているだけでは足りないとする裁判例が多く,極めて厳重な管理が必要と解釈されています。
例えば,社内でも限られた人しか顧客データを閲覧できず,しかも閲覧するためのパスワードが設定されており,パスワード自体も定期的に変更されていたり,顧客情報を紙媒体に印刷するには上長の許可を要し,印刷した紙媒体は使用後速やかにシュレッダーで裁断して廃棄処分することが義務付けられていること等が挙げられるでしょう。
また,USBで管理されているような場合には,保管場所を施錠し,その鍵の管理も厳重にされていることも必要となるでしょう。
秘密管理の方法について,経済産業省の「営業秘密管理指針」も参考となりますので、ぜひご一読ください。
上記のとおり,事後的な対応を取ろうとすると法律上厳格な要件をクリアしなければならないので,雇用する時に秘密保持契約を結んでおくことをお勧めします。

ただし,秘密保持契約で定義する「機密情報」はしっかりとその範囲を定めておかないと,持ち出した情報が秘密保持義務を負う対象になるのかが争いになってしまいますから注意が必要です。

また,「雇用」関係の場合には損害賠償の予定はできません。