【労働】みなし労働時間制度って何?

By suzutaka, 2016年6月1日

最近は,インターネットに「残業代の計算方法」なんて記事も沢山載っているので,従業員本人が残業代請求の内容証明を送ってくることも多くなりました。

また,「労基署に駆け込めば会社は嫌がるだろう」ということで,労基署を介して請求してくるパターンもあります。

さらに,労働審判は身近な手続きとして認知されつつあり,弁護士をつけずに申立をしている方も多いです。

従業員の主張がたとえ法的に認められないものであったとしても,名の知れた企業としてはイメージも大事ですから,出来れば紛争は避けたいですよね。

 

さて,今回は元従業員から残業代を請求されたケースをご紹介します。

 

【相談の概要】

当社は,従業員30名ほどの小さな広告代理店です。

就業規則には1日8時間,週40時間と定めていますが,営業担当は外出が多いので「みなし労働時間制」を採用しており,タイムカードでの管理はしていません。

また,基本給には「みなし残業代30時間分を含む」としていますので,これを超えて残業代を支払ったことはありません。

先日,営業を担当していた元従業員から「残業代を支払え!」との内容証明が届きました。

この従業員には散々苦労させられたので心情的には支払いたくありませんが,労基署に駆け込まれると嫌なので,やむを得ず全額支払いました。

今後同じことを繰り返さないためにも,どういった対処をしておくのが良いでしょうか。

 

 

【アドバイス】

外回りが多い営業マンを抱えている会社ですと,労働時間を管理するのは大変です。

従業員が少ない場合であっても,毎日始業・終業の連絡を入れてもらうのも煩雑ですよね。

そういった問題を解消するために「みなし労働時間制」を導入している会社も多いのではないでしょうか。

この「みなし労働時間制」について少し解説します。

出張や外回り営業のように事業場外でする業務について,使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な場合には,所定労働時間労働したものとみなす(労基法38条の2)という制度です。

労働時間の管理は本来使用者が行うべきですから,その例外にあたる本制度は,厳しい要件の下で適用されます。

具体的には,みなし労働時間制は,①「事業場外の労働」について②労働時間を算定しがたい場合に適用できるので,①と②をクリアする必要があります。

 

例えば,午前中は営業先に直行して午後2時頃から内勤をした場合,午前中~午後2時までは「所定労働時間,労働した」ということにして,午後2時以降は実労働時間をカウントすることになります。

また,「労働時間を算定しがたい場合」というのは,使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否か等によって判断されますから,例えば上司と一緒に外回りをしていたようなケースでは,「労働時間を算定しがたい場合」とは言えない場合もあります。

 

①と②をクリアすると,所定労働時間を労働したと「みなす」ので,反証は許さないことになりますが,労基法38条の2第1項但書では「その業務を遂行するためには所定労働時間を超えて労働することが通常必要になる場合には,その業務に通常必要とされる時間労働したものとみなす」と規定されているので,いわゆる「通常必要時間」については反証の余地が残っていることになります。

なお,「通常必要時間」は労使協定で定め,その届出が必要です。

 

使用者が労働時間を全く管理しないことのリスクは非常に大きいです。

昼間,携帯ゲームや寄り道をして遊んでいる従業員でも,メールやパソコンのログイン履歴を根拠に労働時間を主張されてしまうと,なかなか有効な反論できません。

残業を容認することも,労働者の安全衛生という観点からは好ましくありません。

会社のために一生懸命残業してくれた従業員に対しては,当然の対価として残業代を支給するべきですが,中には「残業代を稼ごう」というふとどき者もいますから,残業するときには事前申請または許可制にしておくと良いでしょう。

 

また,「みなし残業代」についてですが,基本給に含める形で支給すると後々もめることになるので注意が必要です。

みなし残業代を支払っていても,その額を超えて残業していれば,追加で残業代を支払う必要があります。

基本給に含める形で支給している場合,時間給で引き直すと適正な金額が支払われていない場合も非常に多いです。

 

なお,従業員が退職した後に残業代請求されると,年14.6%の遅延損害金支払わなければなりませんから,元従業員とのもめ事はなるべく早く専門家に相談することをお勧めします。