【離婚】上手に別れるためのワンポイントアドバイス③

By suzutaka, 2016年6月1日

2015年9月に発表された全国離婚件数は,22万2107件!!
このうち,未成年者がいる夫婦の離婚は12万9626件もあります。

「子は鎹(かすがい)」とは言うものの,子どもがいても「離婚」を避けられない事情があるのでしょう。

離婚に至るまでには,男女問わず様々な葛藤があり,感情のもつれがあり…。
「そういえば,結婚前からこんなところが嫌だった」と歴史を遡って,相手を憎しみの対象に見てしまう方が多いのも現実です。

さて,今回は相談者Bさん(40代女性,専業主婦,子供2人)のケースをご紹介します。

<相談内容>
夫は40代後半で,先代から続いている小さな会社を経営しており年収は2000万円以上です。私も夫の会社の経理や事務所の掃除程度のことはしていますが,名目上の社員ということで家事と育児をメインにやってきました。
子供たちは小学6年生(12才)と高校1年生(15才)です。
子供が生まれて間もなくの頃,夫の浮気が発覚して以来,家庭内別居の状態になっており必要最低限の会話しかしていません。
私一人で子供たちを育てるには経済的な不安が大きいためなんとか離婚を踏みとどまっていますが,このまま女性としての一生が終わってしまって良いのかと思う時もあります。舅が役員を退任した時にはかなりの額の退職金をもらいましたから,もし財産分与で退職金の半分をもらえるのでしたら,今すぐにでも離婚したいです。私はどのタイミングで離婚を切り出したら有利でしょうか。
また,子供たちは私立の学校に通っていますが,養育費はどの程度もらえるのでしょうか。

●退職金は誰のもの?
財産分与の際に,「夫の退職金の半分は当然もらえるはずだ!」と思われている女性も多いのではないでしょうか。

内助の功があったからこそ夫が定年まで勤め上げることが出来た…となれば「夫婦が協力して築き上げた財産」とお考えになるのは自然なことですし,法的にも確かに退職金は財産分与の対象となり得ます。

ただし,相談者Bさんのように定年前に離婚する場合には,「夫が退職金をもらえる」ということがどの程度現実化しているか?ということが非常に重要です。
相談者Bさんのケースでは,夫の年齢が40才後半ですし会社経営者ですからサラリーマンのように「60才で定年」というわけでもありません。仮に60才で退任することが通例になっている場合であっても10数年の間に会社が倒産するかもしれないですし,病気や事故で働けなくなったり任期の途中で解任される…ということも考えられますので,退職金がもらえることが現実化しているとは言い難いでしょう。
また,小さい会社の役員の場合には退職金規定がそもそも存在しない場合もありますから,これまで退職金がどのような形で支給されていたのか等,支払い実績も考慮することになります。

なお,裁判例では,60才で定年を迎える会社に勤務するサラリーマンの事案について,だいたい55才を目安に退職金の支払いが現実化しているか否かを判断する傾向にあります。

●養育費について
未成年者がいる夫婦が離婚する場合,離婚後の親権者は定めなければなりませんが,養育費については金額を決めなくても離婚できてしまいます。
また,具体的な金額を決めても途中で支払いが止まってしまったりして「元夫から養育費をもらえない」と泣き寝入りする母親が多いのも現実です。

養育費の金額を定めずに離婚し,数年経過してから「やっぱりお金が足りないから支払ってもらいたい」と思った場合,子供の父親とすぐに連絡が取れる環境にあるか分かりませんし,面会交流等で子供と繋がりを持っていない場合には養育費を支払うことに抵抗感を持つ父親も少なくありません。
当事者で話し合いができないときには養育費の支払いを求める調停を申し立てることになりますが,結論が出るまでに時間がかかりますので「今,お金がない」という母親にとっては死活問題ですね。

養育費請求調停では,養育費算定基準表を用いて双方の収入に基づいて決めることがほとんどです。ただ,「今後収入が下がる予定だから,養育費を基準よりも低くしてほしい」「本当に子供のために使われているか不明だから,養育費の利用明細の提出を求めたい」等の主張が出て話し合いが長引くケースは非常に多いです。
養育費請求調停ではその時点での収入をベースに算定しますから,「将来的に収入が下がった場合にはその時に養育費減額調停を申し立ててください」と言われるがほとんどです。
また,養育費の使徒明細を出す義務はありませんし,養育費をどのように使うかを指定することは出来ません。この点は養育費を支払う義務を負う側としては納得しがたい部分かもしれませんね。例えば,子供名義の通帳を作ってもらってそこに養育費を振り込む等,お互いに「子供のための養育費」と認識し合う工夫をすることも一つでしょう。

家庭裁判所が利用している養育費算定基準表は,公立の学校に進学した場合を想定していますから,私立の学校に通っている子供を持つ親にとっては算定表と現実の生活費では乖離が大きいと思います。
算定表から導き出される金額をベースに,養育費を支払う義務を負う側が私立の学校への進学を承諾している場合や,その収入及び資産状況等からみて,特別経費を負担させることが相当であると判断できる場合には,加算部分が認められるでしょう。

離婚調停や離婚裁判で養育費が決まった場合並びに養育費請求調停または審判で養育費が決まった場合は,債務名義となりますので強制執行が可能です。
非監護親が裁判で決まった養育費を支払わない場合には,給料差押え等の手続きを取ることになります。
給料差押えの対象となるのは,①基本給と諸手当(通勤手当を除く)から所得税,住民税社会保険料を控除した残額の2分の1(この残額が月額66万円を超えるときは,その金額から33万円を控除した金額)と②賞与から①と同じ税金等を控除した残額の2分の1(この残額が月額66万円を超えるときは,その金額から33万円を控除した金額)です。
また,養育費を支払い終わるまでに非監護親が勤務先を退職した場合には,退職金から所得税,住民税を控除した残額の2分の1も対象となります(支払期限が到来した部分に限る)。

前述のように,養育費請求調停を申し立てても決着がつくまでに時間と労力がかかりますから,将来支払いがストップしてしまうことに備えて,協議離婚で養育費についても定める場合には,話し合いで決めた内容について公正証書にした上で強制執行認容文言(「支払いを怠ったら,直ちに強制執行に服することを認める」等の条項)を入れておくと良いでしょう。
なお,養育費の支払い条件が曖昧な条項になっていると,せっかく強制執行認容文言を入れても差押えが出来ないことがありますので,離婚給付に関して公正証書化する場合には,専門家に一度相談することをお勧めします。

<まとめ>
離婚に至るまでの事情や財産状況,子供の有無等,個別の事情によってアドバイスの内容は大きく変わります。
弁護士に相談する場合には,ご自身の家族構成や結婚してから築いた財産の内容,離婚に至るまでの経緯をメモ書きしたものなど,資料を準備して行くとより具体的なアドバイスを受けることができます。